遺言執行者とは、遺言者が遺言に基づいてその意思を実現するために指定する人物のことです。
ただ、これから遺言執行者の選任を検討している方は、遺言執行者の具体的な役割や義務について、どこまでやってくれるのか?安心して任せていいか?など不安に思われる方も多いかと思います。
この記事では、遺言執行者とはどんな人物か?について、役割や義務、遺言執行者を選任すべきケースをもとに、基本的な概要を解説します。
遺言執行者とは?主な役割
遺言執行者とは、遺言者が遺した遺言内容に基づいて相続手続きを進める責任を持つ人のことです。
遺言執行者は、遺言者が指示した内容を実現するために、財産目録の作成、預貯金の払い戻し、相続人への資産分配、不動産の名義変更、寄付などを行います。
遺言執行者の義務や、実行できる手続き、実行できない手続きについて詳しく見ていきましょう。
遺言執行者の義務
遺言執行者は、様々な義務を負っております。遺言執行者の義務は、民法で以下のように定められていて、具体的には遺言内容を相続人へ通知することや、相続人調査、相続財産調査、財産目録の作成などが義務に該当します。
遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(第1007条2項)
遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
(第1011条1項)
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
(第1012条1項)
遺言執行者ができること
遺言執行者には、相続財産の管理をはじめ遺言の執行に必要な一切の行為をする権限が認められています。
この権限を行使することで、遺言執行者は独立した立場から遺言の内容を確実に執行することができるのです。
多くの方が誤解しやすい点ですが、遺言執行者は単に管理や監督をするだけではなく、実際の行為も行うことが可能です。
具体的に遺言執行者は、相続手続きにおける以下のような行為をすることができます。
遺言執行者ができること
- 相続財産の管理
- 遺言書の検認
- 相続人調査
- 相続財産調査
- 財産目録の作成
- 預貯金の払い戻し・分配
- 不動産の登記申請
- 自動車の名義変更
- 株式の名義変更
- 保険金の受取人変更
- 遺贈
- 寄付
- 子供の認知
- 相続廃除・相続廃除の取消
特に、相続人の廃除や取り消し、子どもの認知は遺言執行者のみが行える行為です。
また、「法定相続人に相続させる」と記された遺言があった場合、以前までは遺言執行者が単独で相続登記を行うことはできませんでした。しかし、2019年の法改正よって現在では遺言執行者が単独で登記申請を行うことができるようになっています。
遺言執行者ができないこと
遺言執行者には多岐にわたる権限が付与されていますが、「相続税申告」を相続人や受遺者に代わって行うことはできません。
遺言執行者が相続申告を行えないのは、相続税申告が相続人および受遺者の義務とされているためです。
遺言執行者を選任すべきケース
上記で説明した、「遺言執行者しかできないこと」が求められる遺言の内容であった場合、遺言執行者は必ず選任した方がいいと考えられます。
遺言で相続廃除を行う場合
特定の相続人から相続権を奪う「相続廃除」は生前に行うことも可能ですが、遺言によって実施することもできます。
この相続廃除の手続きは、基本的に被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てをする方法(生前廃除)か、遺言によって行う方法(遺言廃除)しかありません。
そのため、生前にご自身で行わない場合は遺言で遺言執行者の選任が必要です。また、生前に相続廃除を行っていた場合、その廃除の取消を遺言書で指示する際にも、遺言執行者の選任が必要となります。
子供を認知する場合
生前に認知するとトラブルなどの問題が発生する可能性がある場合、遺言書で子どもを認知する「遺言認知」という手続きを用いることができます。
遺言認知を行うケースでは、遺言執行者しか認知の届け出を行うことができないため、遺言執行者の選任が必要になります。
相続人だけで進めるのが困難な場合
相続人の中に認知症の方や非協力的な方、または多忙で時間が確保できない方がいる場合、遺言執行者を選任することで相続人の負担を軽減し、遺言の内容を円滑に実行することができます。
また、相続人が自ら手続きを進めることが難しい状況でも、遺言執行者を選任することは有効です。
遺言執行者を選任する方法
遺言執行者の選任方法には、以下の三つの方法があります。
- 遺言で直接指定する
- 遺言で「遺言執行者を指定する人」を選ぶ
- 家庭裁判所に選任の申し立てを行う
遺言で執行者が指定されていない場合や、指定された人が先に亡くなった場合、または遺言執行者の役割を拒否する場合には、相続人などが家庭裁判所に選任の申し立てを行う必要があります。
①遺言者が指定するケース
遺言執行者の選任方法の一つに、遺言者が遺言書で遺言執行者を明示する方法があります。
遺言書に「〜を遺言執行者に指定する」と記載することで、遺言執行者を指定することが可能です。遺言内容を確実に実行してくれる信頼できる人物を選び、遺言執行者として指定することを事前に伝えておくことが望ましいです。
②遺言者が「遺言執行者を指定する人」を指定するケース
遺言執行者の指定・選任方法の一つとして、遺言者が遺言執行者を選ぶ人を決め、その人物を遺言書に記載しておくという方法もあります。
③相続人が遺言執行者の選任申立するケース
遺言書に遺言執行者の記載がない場合や、指定された遺言執行者が亡くなったり辞退したりした場合には、家庭裁判所に遺言執行者選任の申し立てを行います。
この申し立ては、相続人、受遺者、または遺言者の債権者が行うことができ、申し立ての際に家庭裁判所に遺言執行者の候補者を提示することが可能です。
特別な事情がない限り、その候補者が遺言執行者として選任されることが一般的です。
遺言執行者に関するQ&A
今回ご紹介した内容の他に、遺言執行者に関して多くの方が疑問に思われる点についてQ&A形式で解説します。
遺言執行者は相続人と同一人物でも大丈夫?
仮に遺言執行者が相続人であっても、法律上は問題ありません。遺言書にその旨を明記すれば、相続人が遺言執行者として任命されることが可能です。
ただし、法律上問題がないからといって、相続人を遺言執行者に指定することはあまり推奨されません。
理由として、遺言執行者と相続人が同一人物であると、相続人同士の間に摩擦が生じることがあります。また、相続人が遺言執行者としての手続きに慣れていない場合、時間がかかる可能性もあります。
遺言執行者に支払う報酬の相場は?
専門家に遺言執行者を依頼した場合、報酬の相場は「遺産総額の1〜3%」ほどです。
詳しくは、以下の記事もご参照ください。
遺言執行者になるための条件や資格はある?
遺言執行者になるには特別な資格は必要なく、基本的に誰でもなることができます。ただし例外として、未成年者と破産者は遺言執行者になることができません。(民法第1009条)
遺言執行者は相続人の利益に直接関わることはないため、遺言者の配偶者や子供などの相続人から選ぶことも可能であるほか、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。遺言執行者に指名された場合でも、その役割を断ることはできます。
遺言執行者の選任など相続の問題でお悩みの場合は司法書士へ相談を
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