遺言執行者は遺言者の意思を実現するために重要な役割を担う存在です。
遺言執行者は法律上でも相続手続きにおいて多くの権限を持つ人物ですが、遺言執行者ができないことに「相続税申告」があります。
この記事では、遺言執行者ができないことから始まり、遺言執行者の権限や遺言執行者だけが行えることなどについて解説します。
遺言執行者ができないことは「相続税の申告」
遺言執行者とは、遺言に基づく相続手続きを単独で執行する義務・権限を有する人物のことを指します。
遺言執行者には多岐にわたる権限が与えられますが、「相続税申告」を相続人や受遺者に代わって行うことはできません。
遺言執行者が相続申告を行えないのは、相続税申告が相続人および受遺者の義務とされているためです。
遺言執行者の権限は法改正により強化された
遺言執行者はこれまで、「相続人の代理」という位置づけとして扱われていました。
しかし、遺言書の内容が相続人の利益に反する場合には、遺言執行者と相続人の間で争いが生じるケースがありました。
このため、平成30年7月1日に施行された民法改正では、相続人の代理人とみなすという表現が削除され、遺言執行者の権限が明確化されました。これにより、遺言の内容を実現するための強力な権限が与えられたという背景があります。
遺言執行者だけが行えること
遺言執行者だけが行えることとして、以下の手続きが挙げられます。
- 特定遺贈
- 子供の認知
- 相続人排除
それぞれの手続きの内容について解説します。
特定遺贈
特定遺贈とは、不動産などの特定の財産を法定相続人以外の人(受遺者)に遺贈することを指します。特定遺贈の実行は、遺言執行者だけが行うことができます。
民法改正前は、民法改正前は、遺言執行者がいなくても、相続人全員の協力で実行できるとされていました。しかし、民法改正により遺言執行者が存在する場合には、遺言執行者が単独で名義変更などの手続きを行うことができるようになったため、相続人と受遺者の間で生じるトラブルを回避することが可能です。
子供の認知
遺言書では非嫡出子の認知を行うことができますが、この認知に関する手続きを実施できるのは遺言執行者だけです。
遺言書に非嫡出子の認知が記載されていれば、その子供は他の実子と同様に相続人となり、故人の遺産を受け取る権利を得ます。
故人が遺言書で子の認知に言及している場合、遺言執行者は就任後10日以内に認知届けを提出する義務があります。
もし故人が遺言執行者を指定していなかった場合は、相続人などが家庭裁判所に遺言執行者選任の手続きを依頼する必要があります。
相続人廃除・廃除取り消しの手続き
遺言で推定相続人の廃除や廃除の取り消しを行う際、その手続きを実施できるのは遺言執行者のみです。
相続人の廃除とは、故人に対して不利益をもたらす行為や、重大な不快感を与える行為を行った者から相続権を剥奪する制度を意味します。
相続人廃除が認められると、その相続人は一切の相続権を失い、遺留分の請求もできなくなります。
ただし、相続人廃除は故人の意思だけでは行えず、侮辱・虐待・非行とされる特定の行為が認められる必要があります。
遺言執行者ではなくてもできる主な手続き
上記では遺言執行者しか行えない手続きについて解説しましたが、逆に、以下のような手続きにおいては遺言執行者でなくても問題なく行うことができます。
包括遺贈
包括遺贈とは、相続財産の全体または一定の割合を指定して、法定相続人以外の人に遺贈する方法です。
例えば、遺産の半分を法定相続人以外の人に譲渡したい場合、包括遺贈が選ばれます。包括遺贈を受けた受遺者は、法定相続人と同様の権利と義務を持つことになります。
そのため、遺言執行者が指定されているかどうかに関わらず、問題は生じません。
寄与分の指定
寄与分とは、故人の介護や事業の支援などを長年行ってきた相続人が、他の相続人よりも多く財産を受け取ることができる制度です。
寄与分が認められることで、法定相続分以上の遺産を受け取ることが可能になります。
寄与分の設定は、遺言執行者でなくても相続人が行うことができます。
例えば、長年介護を行ってきた特定の相続人に寄与分を与えたい場合、必ずしも遺言執行者を必要としません。
ただし、他の相続人が寄与分に異議を唱える可能性がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家を遺言執行者に指定することで、トラブルのリスクを軽減することをお勧めします。
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