以前までは相続登記をしないものとされていた遺言執行者でしたが、平成30年の相続法改正によって単独で登記手続きが行えるようになりました。
この記事では、相続登記手続きにおける遺言執行者の立場や役割、遺言執行者が相続登記を行う場合の主な手続きの流れについて解説します。
遺言執行者は単独で相続登記手続きを行うことが可能
「相続させる旨の遺言」が存在する場合、遺言執行者は単独で相続に関する登記手続きを行うことができます。
この「相続させる旨の遺言」とは、特定の財産を特定の相続人に引き継ぐ旨が記載された遺言を意味し、民法上では「特定財産承継遺言」と呼ばれます。
例えば、遺産の一部である実家の不動産を特定の子に相続させるケースが「相続させる旨の遺言」に該当します。
このように、被相続人名義の不動産に対して特定財産承継遺言が作成された場合、これまで、遺言執行者には登記手続きを行う権利も義務もないとされていて、その結果、相続人自身が登記手続きを行う必要がありました。
しかし、平成30年の相続法改正により、遺言執行者が単独で登記手続きを行うことが明確化されました(民法1014条2項)。
ただ、相続登記は遺言執行者の義務ではないため、これまで通り相続人が登記手続きを行うことも可能です。
遺贈があった場合は遺言執行者のみが相続登記を行える
「遺贈」とは、遺言を通じて遺言者の財産を他者に贈与することを指します。
この遺贈を受ける人を受遺者と呼びます。受遺者には相続人だけでなく、相続人以外の人物も指定できます。
相続人に対する財産の引き継ぎは「相続させる旨の遺言」によって行われることが多く、遺贈は通常、相続人以外の人が対象となります。
被相続人の名義である不動産が遺贈された場合、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者のみが登記手続きを行えます(民法1012条2項)。
以前は相続人も登記手続きを行うことができましたが、相続法の改正により現在はできなくなったため注意が必要です。また、遺言執行者が不在の場合、登記手続きは相続人が行います。
遺言執行者が単独で相続登記を行う手続きの流れ
遺言執行者が単独で相続登記を行う際の、主な手続きの流れは以下のとおりです。
遺言執行者による相続登記の流れ
- 必要書類の収集
- 登記申請書の作成・法務局へ提出
- 登記完了の確認
必要書類の収集
遺言執行者が単独で相続登記を行うために必要な書類は、以下の通りです。
- 登記申請書
- 故人の死亡が記載されている戸籍(除籍)謄本
- 不動産を取得する相続人の戸籍謄本
- 故人の住民票(除票)または戸籍の附票(除附票)
- 公正証書遺言、または検認済みの自筆証書遺言・秘密証書遺言
- 相続関係説明図
- 不動産を取得する相続人の住民票または戸籍の附票
- 不動産の固定資産評価証明書または納税通知書
遺言書に基づいて相続登記を行う際、故人の生まれてから死亡までの連続した戸籍謄本をすべて収集する必要はありません。
遺言書は他の相続手続きでも使用しますが、登記申請が完了した後に返却されます。
登記申請書の作成・法務局へ提出
必要書類を収集した後、登記申請書を作成します。登記申請書と必要書類の準備が整ったら、法務局に申請を行います。登記申請の方法には、次の3つがあります。
- 窓口での申請
- 郵送での申請
- オンライン申請
オンライン申請は登録手続きが必要で手間がかかるため、専門家以外が申請する場合には窓口か郵送での手続きをお勧めします。
登記完了の確認
登記申請書や添付書類に不備がある場合、申請から1〜2週間後に法務局から連絡があります。また、郵送で登記申請した場合でも、法務局の窓口で不備対応を求められることがあります。
完了予定日までに連絡がなかった場合は、問題なく登記が完了していることを意味するため、完了書類を受け取ります。完了書類の受取および確認の手順は、以下の通りです。
- 完了書類を受け取り、確認する
- 名義変更がされているか登記事項証明書を取得して確認する
- 登記識別情報通知を保管する
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