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任意後見人で後悔しないために|失敗例から学ぶ制度の落とし穴と対策

人生の備えとして注目される任意後見制度ですが、そのメリットばかりが語られるわけではありません。

本記事では、任意後見人選びや契約内容の不備によって後悔するケース、いわば制度の「落とし穴」に焦点を当て、具体的な失敗事例とその対策を徹底解説します。

制度の基本から法定後見との違い、そして後悔しないための契約のポイント、見直し方法までを網羅的にご紹介。将来の安心のために、賢く制度を活用するための知識を深めましょう。

任意後見制度とは?基本を解説

任意後見制度とは、あなたがまだ十分な判断能力を持っているうちに、将来、認知症や病気などで判断能力が低下した場合に備えて、誰にどのような支援をしてもらうかを、あらかじめご自身で決めておく制度です。

これは、ご自身で選んだ方(任意後見人)との間で、財産管理や身上監護に関する契約(任意後見契約)を公正証書で結ぶことで成立します。

成年後見制度が、すでに判断能力が不十分になった方を対象に、家庭裁判所が後見人等を選任するのに対し、任意後見制度は、ご自身の意思に基づいて、将来の備えを主体的に行う点が大きな特徴です。

任意後見制度のメリット

  • 誰に、どのような支援をしてもらうかを、ご自身で事前に決めることができるため、よりご自身の希望に沿った支援が期待できます。
  • 財産管理だけでなく、身上監護についても、ご自身の状況に合わせて細かく契約内容を定めることができます。
  • 将来に対する不安を軽減し、安心して生活を送ることができます。
  • 財産管理や身上監護について、事前に取り決めをしておくことで、親族間の意見対立や紛争を予防する効果が期待できます。

任意後見制度の注意点

  • 判断能力が低下してしまうと、任意後見契約を結ぶことができなくなります。
  • 成年後見制度の後見人には、本人が不利な契約をした場合に取り消すことができる取消権がありますが、任意後見人には原則として取消権はありません。
  • 医療行為への同意など、法律上本人にしかできない行為は、任意後見人でも代行することはできません。
  • 公正証書作成費用や登記費用、任意後見監督人への報酬などがかかります。

任意後見と法定後見の違い

任意後見と法定後見は、どちらも判断能力が不十分な方を支援する制度ですが、開始のタイミングと後見人の選任方法に大きな違いがあります。

任意後見は、ご本人がまだ判断能力があるうちに、将来の判断能力低下に備えて、誰にどのような支援をしてもらうかをご自身で契約(任意後見契約)によって決めておく制度です。ご本人の意思が尊重され、支援内容を柔軟に設定できる点が特徴です。契約は公正証書で作成し、ご本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が選任する任意後見監督人が就任することで効力が生じます。

一方、法定後見は、ご本人の判断能力がすでに不十分な場合に、本人や親族などの申立てにより、家庭裁判所が後見人等(後見人、保佐人、補助人)を選任する制度です。本人の判断能力の程度に応じて類型が分かれ、法律で定められた範囲内で本人を保護・支援します。後見人は、本人の最善の利益を考慮して職務を行い、家庭裁判所の監督を受けます。

任意後見法定後見
開始時期判断能力があるうち(将来に備えて)判断能力が不十分になった後
後見人の選任本人が事前に契約で選任家庭裁判所が選任
本人の意思最大限に尊重される本人の最善の利益を考慮しつつ、可能な範囲で尊重される
柔軟性契約内容を自由に決められるため、柔軟性が高い法律に基づくため、柔軟性は低い

任意後見人に後悔するケースとは?失敗事例と対策を紹介

任意後見制度は、ご自身で選んだ信頼できる方に将来の生活を託せるという大きなメリットがある一方で、残念ながら後悔するケースも存在します。ここでは、代表的な失敗事例をいくつかご紹介します。

ケース1:親族間の対立・不信感の増大

【事例】
長男を任意後見人に指定したが、他の兄弟姉妹が「長男だけが得をするのではないか」「財産を独り占めするつもりではないか」と疑念を抱き、対立が生じた。

【背景】
事前の十分な話し合いや情報共有が不足していた場合、親族間で不信感が生まれやすくなります。特に、財産管理が絡むと、感情的な対立に発展する可能性があります。

【対策】
任意後見契約を結ぶ前に、親族間で十分に話し合い、制度の目的や後見人の役割について理解を深めてもらうことが重要です。必要であれば、弁護士や司法書士などの専門家を交えて説明会を開くのも有効です。また、任意後見監督人を第三者の専門家にすることで、透明性を高め、親族の不安を軽減できる場合があります。

ケース2:任意後見人の不正・不適切な財産管理

【事例】
知人を任意後見人に選んだが、その友人がご本人の財産を個人的な目的で流用したり、明らかに不利益な投資を行ったりした。

【背景】
信頼していた相手でも、経済状況の悪化や倫理観の欠如などから、不正行為に及んでしまう可能性があります。また、専門知識がない方が財産管理を行う場合、適切な判断ができずに財産を毀損してしまうこともあります。

【対策】
任意後見人を選ぶ際は、人柄だけでなく、経済状況や財産管理能力も慎重に検討する必要があります。可能であれば、弁護士や司法書士などの専門家を任意後見人または任意後見監督人に選任することを検討しましょう。また、定期的な財産状況の報告を義務付ける契約内容にする、任意後見監督人によるチェック体制を設けるなどの対策も有効です。

ケース3:任意後見人の負担過多・心身の疲弊

【事例】
一人暮らしの娘を任意後見人に指定したが、娘は仕事と介護の両立に疲れ果て、精神的に不安定になってしまった。

【背景】
任意後見人の役割は多岐にわたり、特に身上監護が必要な場合、身体的・精神的な負担が大きくなることがあります。

【対策】
任意後見人を選ぶ際は、その方の時間的余裕や体力、生活状況などを十分に考慮する必要があります。必要に応じて、複数の任意後見人を選任したり、専門家と連携して支援体制を構築したりすることも検討しましょう。また、後見人の負担を軽減するための福祉サービスの利用なども視野に入れるべきです。

ケース4:任意後見人の判断能力低下・死亡

【事例】
配偶者を任意後見人に指定したが、配偶者自身も認知症を発症してしまい、任意後見人の役割を果たすことができなくなった。

【背景】
任意後見人も人間であり、病気や事故、高齢による判断能力の低下や死亡は避けられません。

【対策】
複数の任意後見人を予備的に指定しておくことや、任意後見監督人を専門家にしておくことで、このような事態に対応できる場合があります。また、定期的に任意後見人の状況を確認し、必要に応じて契約内容の見直しや後見人の変更を検討することも重要です。

ケース5:契約内容の不明確さ・認識のずれ

【事例】
任意後見契約を結んだものの、具体的な支援内容や判断基準があいまいだったため、実際に判断能力が低下した後、ご本人の希望と異なる支援が行われた。

【背景】
契約時に十分な検討や話し合いを行わず、曖昧な内容で契約を結んでしまうと、後々トラブルの原因となることがあります。

【対策】
契約内容については、具体的な支援内容や判断基準、連絡頻度などを明確に定めることが重要です。専門家のサポートを受けながら、ご自身の希望をしっかりと反映した契約書を作成しましょう。

ケース7:家庭裁判所との連携不足

【事例】
任意後見人が独断で重要な財産処分を行い、任意後見監督人や家庭裁判所との連携を怠ったため、後々問題となった。

【背景】
任意後見人は、任意後見監督人を通じて家庭裁判所の監督を受ける必要があります。重要な行為については、家庭裁判所の許可が必要となる場合もあります。

【対策】
任意後見人は、任意後見監督人や家庭裁判所との連携を密にし、適切な報告や相談を行う必要があります。契約締結時や後見開始時に、これらの手続きについて十分に理解しておくことが重要です。

任意後見制度は、適切な準備と信頼できる後見人選びによって、ご本人にとって非常に有効な制度となり得ます。しかし、上記のような失敗事例を踏まえ、慎重に検討し、専門家のサポートを受けながら、後悔のない選択をすることが重要です。契約後も、定期的に内容を見直したり、後見人とのコミュニケーションを密にしたりすることで、より安心して制度を利用することができます。

後悔しないための任意後見契約のポイント

後悔しないための任意後見契約のポイントは、「誰に」「何を」「どのように」託すかを明確にすることです。

▶誰に
まず、「誰に」託すか。信頼できる人物であることはもちろん、財産管理能力や身上監護への理解、そして何よりもご本人の意思を尊重してくれる人物を選ぶことが重要です。親族だけでなく、 知人や専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士など)も検討しましょう。複数人を後見人とする、または予備の後見人を決めておくことも有効です。

▶何を
次に、「何を」託すか。財産管理(預貯金、不動産、年金など)と身上監護(医療・介護契約、施設入所手続き、生活支援など)の範囲を具体的に定める必要があります。将来必要となる可能性のある支援を想定し、曖昧な表現は避けましょう。

▶どのように
そして、「どのように」託すか。後見人の権限や義務、情報共有の方法、定期的な報告の頻度などを明確にします。

特に、重要な財産処分に関する手続きや判断基準は具体的に定めておくべきです。また、任意後見監督人の選任も検討し、後見人の活動をチェックする仕組みを設けることで不正リスクを軽減できます。

任意後見契約を見直したいときの対応法

任意後見契約は、状況の変化に合わせて見直すことが可能です。見直しの主な対応法は以下の通りです。

①当事者間での協議

まず、ご本人と任意後見人予定者(または任意後見人)の間で、契約内容の変更や解除について十分に話し合います。お互いの意向を確認し、合意に至れば、次の手続きに進みます。

②変更契約の締結(内容変更の場合)

契約内容の一部を変更する場合は、変更合意の内容を改めて公正証書で作成する必要があります。元の任意後見契約の内容と変更点を明確にし、公証役場で手続きを行います。変更契約も登記されることで、その効力が生じます。

③解除契約の締結(契約解除の場合)

任意後見契約を解除する場合は、ご本人と任意後見人(または任意後見人予定者)双方が合意の上で、解除契約を公正証書で作成します。これにより、任意後見契約は効力を失います。解除契約も登記される必要があります。

④家庭裁判所への申し立て(一方的な解除や後見監督人選任後の変更)

【ご本人が判断能力を回復した場合】
家庭裁判所に任意後見監督人の選任の終結を申し立てることで、任意後見契約は終了します。

【任意後見人に不正や不適切な行為があった場合】
ご本人や親族等は、家庭裁判所に任意後見人の解任を申し立てることができます。

【任意後見監督人選任後に契約内容を変更したい場合】
原則として、任意後見監督人の同意が必要となります。重要な変更については、家庭裁判所の許可が必要となる場合もあります。

まとめ

任意後見制度は、ご自身の意思に基づいた将来設計を可能にする有効な手段ですが、その活用には慎重な検討と準備が不可欠です。

本記事で紹介した失敗事例から、後見人選びの重要性、契約内容の明確化、そして親族間の十分な話し合いの必要性をご理解いただけたかと思います。

後悔しないためには、「誰に」「何を」「どのように」託すかを明確にし、専門家のサポートを受けながら、ご自身の状況に合った契約を結ぶことが重要です。

また、状況の変化に合わせて契約を見直す柔軟性も忘れてはなりません。本記事が、皆様にとってより良い選択をするための一助となれば幸いです。

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