
相続は、人生における大きなイベントの一つであり、専門家のサポートが必要となるケースが少なくありません。相続に関する手続きは複雑多岐にわたるため、誰に相談すれば良いのか迷う方も多いでしょう。
そこで、相続相談について、登記と遺産という観点から、司法書士と税理士の役割を明確にし、あなたが適切な専門家を選べるよう、解説します。
まずは以下に、司法書士と税理士の特徴・役割を比較した表を整理しました。この表をみたうえで、記事を読み進めると、いっそう理解が深まります。
司法書士 | 税理士 | |
主な業務 | 不動産登記、遺産分割協議書の作成、遺言執行など | 相続税の申告、税務相談、節税対策など |
専門分野 | 民法、不動産登記法など | 税法、特に相続税法 |
資格 | 司法書士試験合格者 | 税理士試験合格者 |
強み | 登記手続きの専門家、遺産分割協議のサポート | 相続税の計算、節税対策の提案 |
相続相談手続きにおける役割 | 不動産の名義変更、遺産分割協議書の作成、遺言執行など | 相続税の申告、納付、節税対策 |
相談内容の例 | 不動産の名義変更の手続き、遺産分割の方法、遺言書の作成 | 相続税の計算方法、節税対策、相続税の申告書の作成 |
相続手続きにおける司法書士と税理士の役割
相続は、人生における大きなイベントの一つであり、様々な手続きが必要となります。この手続きをスムーズに進めるためには、司法書士と税理士という二つの専門家の役割を理解することが重要です。
司法書士の役割
司法書士は、主に不動産の名義変更や遺産分割協議書の作成など、法的な手続きを専門とする国家資格者です。相続手続きにおいて、司法書士は以下のような業務を行います。
相続登記 | 亡くなった方の不動産の名義を相続人に変更する手続き |
遺産分割協議書の作成 | 相続人全員が合意した内容をまとめた書面を作成する |
遺言執行 | 遺言書の内容に基づき、遺産分割を行う |
相続放棄の手続き | 相続を放棄したい場合の手続き |
税理士の役割
税理士は、相続税の申告・納付を専門とする国家資格者です。
相続税は高額になる場合が多く、専門的な知識が必要となります。税理士は、以下のような業務を行います。
相続税の申告書の作成 | 相続財産の評価額を算出し、相続税額を計算し、申告書を作成します。 |
相続税の節税対策 | 合法的な範囲内で相続税を減らすための対策を提案します。 |
税務調査への対応 | 税務署から調査が入った場合に対応します。 |
【判断のポイント】司法書士と税理士、どちらに相談すればいいの?
- 不動産の相続登記が必要な場合➡司法書士に相談
- 相続税の申告が必要な場合➡税理士に相談
- 両方の手続きが必要な場合➡司法書士と税理士の両方へ相談
以下に、もう少し具体的なケースで、司法書士と弁護士どちらに相談するべきか判断するか整理しました。
ケース | 誰に相談? | 理由 |
亡くなった方の不動産を相続する場合 | 司法書士 | 不動産の名義変更手続きが必要だから |
高額な遺産があり、相続税が心配な場合 | 税理士 | 相続税の申告・節税対策が必要だから |
相続人が複数いて、遺産分割で揉めている場合 | 司法書士(または弁護士) | 遺産分割協議書の作成、法的な紛争解決が必要だから |
相続登記は司法書士へ!
あらためて、司法書士が得意とする領域「相談登記」についてみていきましょう。
相続登記とは
相続登記とは、亡くなった方の不動産の名義を、相続人に変更する手続きのことです。具体的には、法務局に登記申請を行い、不動産登記簿に所有者情報を変更する手続きとなります。
【相続登記が必要な理由】
- 相続登記を行うことで、誰がその不動産の所有者であるかを明確にし、トラブルを防ぎます。
- 相続登記を行わないと、相続した不動産を売却したり、贈与したりすることができません。
- 相続した不動産を担保にローンを組む際にも、相続登記が必要です。
- 相続税の申告や納付には、相続登記が完了している必要があります。
相続登記の種類と手続きの流れ
相続登記の種類
相続登記には、大きく分けて以下の3種類があります。
【法定相続分による相続登記】
遺言がない場合に、法律で定められた相続分に基づいて相続が行われるケースです。
各相続人が、自分の相続分に応じた割合で不動産を取得します。
【遺産分割協議による相続登記】
相続人全員が話し合い、遺産をどのように分割するかを決める場合です。
遺産分割協議書を作成し、その内容に基づいて登記を行います。
【遺言による相続登記】
亡くなった方が遺言を残している場合、遺言の内容に従って相続が行われます。
相続登記の手続きの流れ
- 相続人の確定:戸籍謄本などを基に、相続人を特定します。
- 遺産の調査: 亡くなった方の財産(不動産、預金など)を全て調査します。
- 遺産分割協議:相続人全員で集まり、遺産の分割方法について協議し、遺産分割協議書を作成します。
- 必要書類の準備:遺産分割協議書、戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書、印鑑証明書などを用意します。
- 法務局への申請:準備した書類を持って、管轄の法務局へ登記申請を行います。
相続登記に必要な書類
- 登記申請書:法務局で交付される所定の用紙です。
- 遺産分割協議書:相続人全員が署名・捺印したものでなければなりません。
- 戸籍謄本:被相続人(亡くなった方)と相続人の戸籍謄本が必要です。
- 住民票:被相続人(亡くなった方)と相続人の住民票が必要です。
- 固定資産評価証明書:相続財産となる不動産の評価額が記載された証明書です。
- 印鑑証明書:相続人全員の印鑑証明書が必要です。
相続登記の注意点
- 期限:相続開始を知った日から3年以内に行う必要があります。
- 専門家への相談:相続手続きは複雑なため、司法書士に相談することをおすすめします。
- 費用:登記費用、司法書士への報酬などがかかります。
相続登記を自分でするのが難しい理由
相続登記は、自分で行うことができます。
しかし法律に関する専門知識が必要な手続きであり、自分で行うには様々な困難が伴います。その主な理由を以下に詳しく解説します。
【法律知識の不足】
複雑な法律: 相続に関する法律は非常に複雑で、常に改正される可能性もあります。素人の方には、全ての法律を把握するのは困難です。
【専門用語】
登記申請に必要な書類や用語は、法律用語が多く、一般の方には理解しづらいものが多くあります。
【解釈の難しさ】
法律の解釈は、ケースによって異なる場合があります。専門家でない限り、正しい解釈をするのは難しいです。
【手続きの煩雑さ】
必要な書類が多く、種類も多岐にわたります。戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書など、様々な書類を揃える必要があります。
【時間的なコスト】
相続登記には一定の期間がかかります。手続きに慣れていない人が自分で行うと、余計に時間がかかってしまう可能性があります。
【相続に関するトラブル】
相続人とのトラブル: 相続人が複数いる場合、遺産分割でトラブルになる可能性があります。
【不動産の評価額】
不動産の評価額が正確に行われないと、相続税額に影響が出る可能性があります。
司法書士を選ぶポイント
相続登記は、一生に一度あるかないかの大きな手続きです。そのため、信頼できる司法書士を選ぶことは非常に重要です。司法書士を選ぶ際のポイントをいくつかご紹介します。
【相続手続きの経験が豊富か】
相続登記の経験が豊富であれば、スムーズに手続きを進めることができます。
相続に関する専門知識が豊富で、複雑なケースにも対応できる可能性が高いです。
【親身になって相談に乗ってくれるか】
相続は、感情的な側面も大きく関わってくる手続きです。自分の話を丁寧に聞いてくれ、親身になって相談に乗ってくれる司法書士を選びましょう。
【説明が分かりやすいか】
法律用語を使わずに、分かりやすく説明してくれる司法書士を選ぶことが大切です。相続手続きの流れや費用についても、丁寧に説明してくれるか確認しましょう。
【費用が明確か】
相続手続きにかかる費用は、事務所によって異なります。費用について事前にしっかりと確認し、納得できる範囲内で依頼できる司法書士を選びましょう。
【他の士業との連携】
税理士や弁護士など、他の士業と連携している司法書士は、相続手続きを総合的にサポートしてくれます。特に、相続税が発生する場合には、税理士との連携が重要になります。
遺産分割と相続税は税理士へ!
税理士が得意とする「遺産分割」「相続税」とはいったいなんなのでしょうか。
相続税とは
相続税とは、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ人が、その受け取った財産に対して支払う税金のことです。具体的には、現金、預金、不動産、株式など、金銭に換算できるすべての財産が対象となります。
相続が発生した場合、相続人は、原則として10ヶ月以内に税務署に相続税の申告を行う必要があります。申告が遅れると、延滞税などが課される可能性があります。
【相続税がかかる理由】
相続税は、財産が代々同じ家族に引き継がれていくことを防ぎ、社会全体の財産を分散させる目的で課せられています。また、相続によって生じる不公平感を是正し、社会全体の公平性を保つ役割も担っています。
相続税の申告と納付の流れ
相続が発生した場合、一定の財産を取得した相続人は、原則として10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。
- 相続財産の調査:銀行口座、不動産、株式など、被相続人が残した財産を全て洗い出します。
- 債務も調査し、相続財産から差し引く必要があります。
- 相続人の確定:戸籍謄本などを基に、相続人を特定します。
- 遺産分割協議:相続人全員で協議し、遺産をどのように分割するかを決めます。
- 遺産分割協議書を作成します。
- 財産の評価:相続財産の評価額を算定します。不動産の評価は特に専門的な知識が必要となります。
- 相続税額の計算:相続税額は、相続財産の評価額から基礎控除額などを差し引き、税率を乗じて計算します。
- 申告書の作成:税務署に提出する相続税申告書を作成します。
- 税理士に依頼する場合、税理士が作成します。
- 申告書の提出:作成した申告書を、被相続人の最後の住所地の税務署に提出します。
- 納税:申告した相続税額を納付します。
【納付方法】
金融機関での納付➡納付書を用いて、金融機関で納付します。
電子納付➡インターネットバンキングなどを使って納付できます。
口座振替➡税務署に口座振替を依頼することも可能です。
【申告期限】
相続開始を知った日から10ヶ月以内が原則です。
【必要な書類】
- 相続税申告書:税務署で用紙を入手するか、税理士に作成を依頼します。
- 戸籍謄本:被相続人および相続人の戸籍謄本が必要です。
- 遺産分割協議書:相続人全員が署名・捺印したものでなければなりません。
- 固定資産評価証明書:不動産がある場合は必要です。
- 銀行口座の残高証明書:預金がある場合は必要です。
- 株式の評価証明書:株式がある場合は必要です。
- その他:財産の種類によって、必要な書類が異なります。
相続税の申告を自分でするのが難しい理由
相続登記と同様に、法律解釈の難しさ、手続きの煩雑さ、時間的な制約などが、自分で手続きを完了させるハードルになっています。相続税の申告も、やはり専門家に依頼することを推奨します。
税理士を選ぶポイント
【相続税申告の実績】
相続税申告の実績が豊富かを確認しましょう。経験豊富な税理士は、複雑なケースにも対応できます。特に、高額な遺産の申告実績があるかを確認すると良いでしょう。
【専門性】
相続税に特化した専門知識を持っているか確認しましょう。相続税は法律改正が頻繁に行われるため、常に最新の知識を持っている税理士が理想です。
【コミュニケーション能力】
相続はデリケートな問題を伴うため、丁寧に説明してくれるか、相談しやすい雰囲気かどうかを確認しましょう。専門用語を使わず、分かりやすく説明してくれる税理士がおすすめです。
【費用】
相続税の申告費用は、税理士事務所によって異なります。費用だけでなく、どのような費用が含まれるのか、明細書を提示してくれるかなどを確認しましょう。
まとめ:専門家への相談で安心の相続手続きを
相続は、人生における大きな転換期です。専門家のサポートを得ることで、複雑な手続きをスムーズに進め、新たな人生のスタートを切るための時間を確保することができます。
司法書士や税理士といった専門家への相談は、決して無駄にはなりません。まずは、お気軽にご相談ください。