子がなく、兄弟姉妹もすでに亡くなっている方の相続では、甥や姪が代襲相続人となります。生前から親しく交流があれば手続きも進めやすいですが、被相続人と甥姪との間にほとんど交流がなく、互いの居所すら分からないケースも珍しくありません。相続人の所在が不明であれば遺産分割協議を始めることすらできず、不動産の売却も預貯金の解約も止まったままになります。本記事では、交流のなかった甥姪全員の住所を調査し、手紙で連絡を取ったうえで遺産分割協議を成立させ、不動産の換価分割と預貯金の解約までを完了した事例をご紹介します。
相談時の状況と手続き上の複数の課題
被相続人は子のいない方で、配偶者もすでに他界されていました。被相続人の兄弟姉妹も全員が先に亡くなっていたため、相続権は代襲相続により甥姪に移行しています。ご相談者は甥の一人ですが、被相続人とは生前からほとんど交流がなく、他の甥姪についても同様に一切の交流がない状態でした。相続人である甥姪の住所も把握できておらず、連絡手段がないところからのスタートとなりました。
相続財産は不動産と預貯金です。不動産については売却を希望されていましたが、売却するためにはまず相続人名義への登記変更が必要であり、そのためには相続人全員による遺産分割協議が前提となります。預貯金の解約にも同様に全員の合意が求められます。つまり、甥姪全員の所在を突き止め、連絡を取り、合意を形成するという一連の工程をすべて完了しなければ、どの手続きも前に進まない状況でした。
相続人の住所調査から遺産分割協議成立までの実務
戸籍収集と戸籍附票による甥姪全員の住所特定
行政書士にて、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、被相続人の両親の戸籍、さらに先に亡くなっている兄弟姉妹の戸籍を順次収集し相続人を確定させてました。甥姪が相続人となるケースでは、被相続人本人だけでなく、その両親および亡くなった兄弟姉妹の戸籍まで収集範囲が広がるため、通常の相続と比べて戸籍の通数が大幅に増加します。
相続人が確定した後、交流のない甥姪の現住所を把握するため、戸籍附票を取得しました。戸籍附票は本籍地の市区町村が管理する住所異動の記録であり、戸籍から本籍地を特定できれば、住民票上の現住所を確認することが可能です。全員の住所が判明した後、ご相談者の名前で各甥姪に手紙を送付していただきました。相続が発生したこと、手続きへの協力をお願いしたい旨を丁寧に記載した手紙により、甥姪全員と無事に連絡がつきました。
換価分割による不動産の処理と効率的な協議書設計
戸籍収集と財産調査の完了後、遺産分割の方法について相続人全員で協議を行いました。預貯金については法定相続分の割合で各自が取得し、不動産については、甥姪のうち誰か一人が取得しても他の相続人への代償金の支払いが困難であることから、換価分割の方法を採用しました。換価分割とは、不動産をいったん特定の相続人の名義に移転して売却し、売却代金から諸経費を差し引いた金額を相続人全員で分配する方法です。本件ではご相談者の名義に相続登記を行ったうえで売却を進め、代金を全員に分配する内容としました。
遺産分割協議書の作成にあたっては、近隣に住む相続人についてはまとめて一通の協議書に署名捺印をいただき、遠方の相続人にはそれぞれ個別に協議書を作成して郵送で対応しています。このように協議書を分けて作成することで、全員の捺印を待つ時間を短縮し、手続き全体を効率的に進めることができました。遺産分割協議書取付完了後、預貯金解約と相続登記も無事完了致しました。
相続登記完了後のトータルサポートと同様のケースへのアドバイス
当事務所では、相続登記完了後、不動産の売却について、グループ会社提携の不動産会社をご紹介し、また、不動産売却代金にかかる譲渡所得税の確定申告についても、提携の税理士をご紹介しました。相続手続きから不動産売却、税務申告に至るまで、当事務所を窓口としてトータルにサポートすることで、ご相談者が個別に専門家を探す手間を省いています。
甥姪が相続人となるケースでは、本件のように相続人間に交流がないことが多く、手続きの難易度は一般的な相続と比較して格段に高くなります。特に重要なのは、相続人全員の所在を確実に把握し、連絡を取ることです。一人でも所在不明の相続人がいれば遺産分割協議は成立せず、不動産の売却も預貯金の解約もできません。
また、不動産の換価分割を行う場合には、相続登記、譲渡所得税の申告と、複数の専門分野にまたがる手続きが発生します。それぞれの手続きを別々の専門家に依頼すると、情報の引き継ぎや日程調整に時間がかかり、手続きが長期化するおそれがあります。一つの事務所が窓口となり、必要に応じて提携先の専門家と連携する体制をとることで、全体の進行管理がスムーズになります。交流のない相続人がいる相続や不動産の売却を伴う相続でお困りの際は、お早めに当事務所にご相談ください。


