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遺言

自筆証書遺言が無効に|方式不備を乗り越え遺産分割協議で相続を完了した事例

亡くなった親が遺言書を残していた。しかし、いざ手続きに使おうとしたところ、遺言書の方式に不備があり無効と判断されてしまった。こうしたケースは実際に少なくありません。自筆証書遺言は、遺言者が自ら全文を手書きするという手軽さがある一方で、民法が定める方式要件を欠くと、法的に無効となったり、預貯金解約や相続登記で使用できない恐れがあります。本記事では、自宅に保管されていた自筆証書遺言に日付の記載がなく、さらに修正部分の訂正方法にも不備があったために遺言書として使用できず、改めて遺産分割協議を行うことで相続手続きを完了した事例をご紹介します。

相談時の状況と遺言書をめぐる懸念

ご相談者は、亡くなったお父様の長男でした。お母様はすでに他界されており、相続人は長男(ご相談者)と弟の2名です。弟は道外に在住しており、兄弟間の仲は悪くないものの、遠方に住む弟との間で手続きを円滑に進められるかという点に不安を抱えていました。
お父様の自宅からは自筆証書遺言が見つかっていました。自宅で保管されていた自筆証書遺言を使って手続きを進めるには、まず家庭裁判所での検認という手続きが必要になります。検認の申立てから相続登記や預金解約までの一連の手続きを確実に進めるため、当事務所にご相談いただきました。司法書士が遺言の検認申立てと相続登記を、行政書士が戸籍収集、財産調査、預金解約をそれぞれ担当する体制で受任しています。

検認手続きの実施と遺言書の方式不備の判明

家庭裁判所への検認申立てと約2か月の待機期間

自筆証書遺言が自宅に保管されていた場合、相続人が勝手に開封することは法律で禁じられています。家庭裁判所に検認の申立てを行い、裁判官の立ち会いのもとで開封・確認する手続きを経なければなりません。検認とは、遺言書の現状を保全するための手続きであり、遺言の内容が有効か無効かを判断するものではありません。しかし、検認を経なければ遺言書を相続登記や預金解約に使用することはできないため、避けて通れない工程です。
本件では司法書士が検認の申立てを行い、検認期日は申立てから約2か月後に決定されました。この間、遺言書は開封できず、遺言の内容に基づく手続きは一切進めることができません。検認期日までの待機期間は、相続手続き全体のスケジュールに大きな影響を与えます。

日付の欠落と訂正方法の不備による無効判断

検認期日に家庭裁判所で遺言書を開封したところ、2つの重大な方式不備が確認されました。第一に、遺言書に日付の記載がありませんでした。民法第968条は、自筆証書遺言の有効要件として、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印することを求めています。日付は遺言者の遺言能力の有無を確認するためや、複数の遺言書が存在する場合の前後関係を判断するために不可欠な要素であり、その欠落は遺言の無効事由となります。
第二に、遺言書中の修正部分における訂正方法にも不備がありました。自筆証書遺言の加除訂正には、変更した場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印するという方式が法律で定められています。本件ではこの訂正方式が守られていませんでした。これらの不備により、当該遺言書を相続登記や預金解約の手続きに使用することはできないと判断されました。

遺産分割協議による解決と手続きの完了

遺言書を使った手続きができないため、相続手続きは遺産分割協議によって進めることになりました。相続人2名で協議を行った結果、遺言書に記載されていた内容と同じ分割方法で合意が成立しました。
合意内容をもとに行政書士にて遺産分割協議書を作成し、相続人2名の署名捺印を得て協議書を完成させました。道外在住の弟には郵送で対応し、実印での署名捺印と印鑑証明書の返送をお願いしています。完成した遺産分割協議書をもとに、司法書士が相続登記を申請し、行政書士が預貯金口座の解約手続きを行い、すべての相続手続きが完了しました。

手続き完了後の状況と遺言書作成に関するアドバイス

本件では、兄弟間の関係が良好であったことから、遺言書が無効になった後も遺産分割協議をスムーズに成立させることができました。しかし、相続人間の関係が複雑なケースや、遺言の内容と異なる分割を主張する相続人がいるケースでは、遺言書の無効が深刻な紛争につながる可能性があります。
自筆証書遺言には、本件で明らかになったように複数のリスクが伴います。まず、遺言者の死亡後に家庭裁判所での検認手続きが必要となり、申立てから検認期日まで1か月から2か月程度の期間がかかります。この間、預金解約や相続登記は進められません。そして、検認はあくまで遺言書の現状を保全する手続きであり、内容の有効性を保証するものではありません。せっかく検認を経ても、本件のように遺言に不備があれば遺言書を預金解約にも相続登記にも使用できず、改めて遺産分割協議が必要になります。
こうしたリスクを回避するためには、遺言書を公正証書で作成することが望ましいといえます。公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認しながら法的に有効な形式で作成するため、方式不備による無効のリスクがありません。また、原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんのおそれもなく、家庭裁判所での検認手続きも不要です。遺言者の死亡後、相続人はただちに手続きに着手することができます。遺言書の作成をお考えの方は、将来のご家族の負担を軽減するためにも、当事務所にご相談ください。

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