「子どものいない夫婦で、夫が亡くなった場合、相続人は誰になるのか」。このご質問をいただくことは少なくありません。配偶者は常に相続人となりますが、子がいない場合、相続権は第二順位である被相続人の父母へ、父母もすでに他界していれば第三順位である兄弟姉妹へと移ります。さらに兄弟姉妹の中にすでに亡くなっている方がいれば、その子(甥・姪)が代襲相続人となります。本記事では、相続人が妻を含む6名に及び、戸籍収集だけで20通超・約2か月を要した第三順位の相続手続きについて、実際の解決事例をもとに解説します。
第三順位の相続が発生した背景と課題
ご相談者は、亡くなったご主人の妻でした。ご夫婦にはお子様がおらず、ご主人の両親もすでに他界されていたため、民法の規定により相続権は第三順位の兄弟姉妹に移行しました。ご主人には長兄、姉、弟の3名のきょうだいがいましたが、長兄はすでに亡くなっており、長兄の子3名が代襲相続人となりました。その結果、法定相続人は妻、甥姪3名、姉、弟の合計6名という構成になりました。
相続財産は預貯金のみであり、不動産や有価証券はありませんでした。相続人全員と連絡がつく状態にあり、相続人間の関係も良好でした。一見すると円滑に進められそうな案件ですが、第三順位の相続には特有の難しさがあります。それは、戸籍収集の範囲が大幅に広がるという点です。
配偶者と子が相続人となる一般的な相続であれば、必要な戸籍は被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人各自の現在の戸籍謄本程度で済みます。しかし第三順位の場合、兄弟姉妹が相続人であることを証明するために、被相続人の両親についても出生から死亡までの連続した戸籍が必要になります。さらに代襲相続が発生している場合は、すでに亡くなっている兄弟姉妹(本件では長兄)の出生から死亡までの戸籍も加わります。
行政書士が設計した戸籍収集と手続きの進め方
相続人間の仲が良好であるとはいえ、手続きが長期化すれば関係者全員に負担がかかります。ご相談者も、できる限り迅速に手続きを完了させたいとのご意向でした。そこで行政書士として受任し、職務上請求書を活用した戸籍収集から預貯金の解約手続きまでを一括して対応する方針としました。
20通を超える戸籍の収集と約2か月の所要期間
本件で収集が必要となった戸籍の範囲は、次のとおりです。まず、被相続人であるご主人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本。次に、ご主人の父および母それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本。これは、被相続人に子がいないこと、および第二順位の相続人である父母が存在しないことを公的に証明するために不可欠です。さらに、すでに亡くなっている長兄の出生から死亡までの連続した戸籍謄本。これにより長兄の子3名が代襲相続人であることを証明します。加えて、相続人全員(妻、甥姪3名、姉、弟)の現在の戸籍謄本が必要となります。
被相続人やそのご両親が生涯のうちに本籍地を異動していれば、異動先の市区町村ごとに戸籍を請求しなければなりません。古い戸籍は改製原戸籍や除籍謄本として保管されており、記載内容の読み取りにも専門知識が必要です。最終的に取得した戸籍は20通を超え、すべての収集が完了するまでに約2か月を要しました。
遺産分割協議書の作成と預貯金解約の実行
戸籍収集により法定相続人6名の確定が完了した後、預貯金の分配方法について相続人全員の合意を取りまとめ、遺産分割協議書を作成しました。6名全員の実印による署名捺印と印鑑証明書を取り揃え、各金融機関に対して口座解約の手続きを進めました。相続人間の合意形成がスムーズであったこともあり、戸籍収集完了後の手続きは比較的短期間で完了しています。
手続き完了後の状況と第三順位の相続で押さえるべきポイント
すべての預貯金口座の解約が完了し、遺産分割協議書の内容に基づいた分配が実現しました。ご相談者である奥様からは、自分だけでは到底対応できなかったとのお言葉をいただきました。
第三順位の相続では、次の点を意識しておくことが重要です。第一に、戸籍収集の範囲と所要期間を正確に見積もることです。被相続人だけでなく、その両親、さらに代襲相続が生じている場合は亡くなった兄弟姉妹の戸籍まで必要となるため、一般的な相続と比べて収集範囲が格段に広がります。本件のように20通以上、期間にして2か月近くかかるケースも珍しくありません。
第二に、相続人の人数が多くなるほど、署名捺印や書類のやり取りに時間がかかります。関係が良好であっても、全員の日程調整や郵送のタイムラグは避けられません。早い段階で専門家に依頼し、手続き全体のスケジュールを管理してもらうことで、不要な遅延を防ぐことができます。
子がいないご夫婦の相続は、ご本人が想像している以上に手続きが複雑になることがあります。戸籍の読み取りや相続人の確定に不安を感じたら、お早めに行政書士へご相談ください。


